2014年1月31日金曜日

成年後見と相続について

最近、高齢化社会の進展に伴い、「成年後見」という言葉を耳にすることが多くなりました。

「成年後見」とは、認知症等により判断能力が低下してきた方々の財産を保護するための制度です。

具体的には、認知症等により判断能力が低下してしまい、訪問販売等によって不当な契約を締結してしまった場合でも、成年後見人がついていればすぐに取り消すことができます。

また、自己の財産、特に居住用財産を他人にあげてしまったり、極めて安い価格で処分してしまったりした場合にも、成年後見人がついていればすぐに取り消すことができます。

このように、ご自身で自分の財産を守れなくなった場合に、「成年後見人」が代わりに財産を管理し、悪徳業者等による詐欺的な取引からご本人を守る制度が、「成年後見制度」です。

最近財産管理に不安がでてきた方々、そしてご自身のご両親や祖父母が認知症の疑いがあるものの、遠方に住んでいたり忙しくて同居したり財産管理をしてあげることができない場合などには、成年後見人をつけて財産を保護することをお勧めします。


他方、成年後見人が必要となる事例には、一部の親族が高齢者等の財産を私的に使い込んでしまっているケースもあります(もちろん、ご本人の介護費用、生活費用といった高齢者等の方々のために使用している場合は別です)。
これは、他の親族が見つけたり、介護士、ケースワーカーなどの方々が不審に思って相談して発覚することが多いです。

詐欺に引っかかったり、急に財産を処分したりすると発覚しやすいのですが、ご本人の親族が使い込んでるケースではあまり発覚しにくく、気がついたらご本人の老後の資産がなくなっていたということも稀ではありません。

そして、この場合には、一概には言えませんが、その後の遺産分割で揉めることが多いです。

なぜなら、一部の親族がご両親の預貯金等の財産を私的に使用して相続財産が減少している場合には、他の相続人が受けとる遺産が少なくなってしまうからです。

遺産分割では、相続人の一部が私的に使い込んだ場合には、使い込んだ分は「遺産の先取り」がなされたものとして、その分相続できる財産を減らすことができます。
しかし、それには使い込んだ分を特定しなければなりません。当然、当事者同士の話合いではまとまらず、調停・審判が無駄に長期化したり、遺産分割とは別に民事訴訟の提起という段階にまで発展するケースもあります。

このようなことを未然に防ぐ方法として、一部の親族による財産の使い込みが疑われる場合には、弁護士等の専門職による成年後見人をつけて財産を保護することは極めて有効です。

以上のように、財産管理に不安がある方々、そして認知症等の疑いがあるご両親又は親族がいらっしゃる方々は、一度、成年後見制度の利用(=「成年後見申立て」)を検討されてはいかがでしょうか。

2014年1月26日日曜日

弁護士の理想について

今日は法律のことではなく日常的な出来事について書きます。

先日、先輩弁護士であるK野先生にお寿司をご馳走になりました。
姫路にある富久寿司というお店なのですが、もう何を食べても美味い!

マグロ、アナゴ、ウニ、イクラと高級なものばかり出てくるはでてくるは。。。
その1つ1つが、他の店の寿司とはまるで味が違うのです。

寿司だけでなく、煮物や揚げ物もあるのですが、これまた絶品!

前回連れて行っていただいた時には、その2週間後くらいに北海道に行ったのですが、北海道の寿司や海鮮丼よりも富久寿司のほうが断然美味しかったので、北海道にがっかりしたことを覚えています。

姫路に行く機会があれば、いや機会がなくとも是非行かれてみてはいかがでしょうか。自信をもってお勧めします。ただし、値段も相当高いです。。。

その食事中に、K野先生から弁護士の仕事について色々教えていただきました。

その中でも、最も勉強になったのが、「目の前の依頼者に心から満足してもらうことが、弁護士として仕事をしていく上で最も大切なこと」という言葉です。

「弁護士にとって100ある事件の中の1つであっても、相談者や依頼者にとっては人生を揺るがす重大な1つの事件である。」
「自分の事件に対して十分に時間をかけ、最善を尽くし、万全の準備をして仕事に臨むことが、弁護士として仕事をする上で最低限のラインである、それができないなら依頼を断るか、他の弁護士に回すべきである。」
「依頼者に心から信頼してもらえれば、その依頼者が困ったことがあったり、友人・知人に困った人がいれば、また相談してくれる。それくらいまで信頼し満足してもらうことが大事である。」

私はK野先生に2日間ついたことがあるのですが、K野先生はこれらを実際に実践していました。
それだけに、言葉の重み、説得力が違いました。

自分の甘さを痛感するとともに、身近にこのような手本となる、尊敬できる先輩がいることは、本当にありがたいことだと実感しました。
自分も心機一転、心を入れ替えて仕事に取り組んでいこうと決意を新たにしました。

これは決してお寿司をご馳走になったから言っているのではありません(笑)

また、このような教訓は、弁護士だけでなく、他の職業にも共通することではないかと思います。

弁護士としての理想をみた貴重な一日でした。



2014年1月23日木曜日

犯罪被害者の救済について

犯罪が起きると被疑者・被告人は裁判の当事者として刑事手続きに参加しますし、ほぼ全ての事件で弁護人がつきます。

しかし、犯罪行為によって直接被害を受けた「犯罪被害者 」は、刑事手続きに参加することはあまりありませんし、弁護人がつくこともあまりありません。
本来であれば真っ先に救済されるべき被害者が、経済手続きでは置いてきぼりになっているのが現状です。

もっとも、近年では犯罪被害者の救済の制度がある程度整備されつつあります。

例えば、
① 刑事手続きに参加して意見を述べることができる「犯罪被害者参加  制度」
② 刑事手続きの延長で加害者に迅速に損害賠償請求できる制度
③ 犯罪被害者の被害回復のための公的な給付金制度
などがあります。

特に、①の被害者参加制度は、被害者が言いたいことをしっかりと裁判で主張することで、被害者の精神的な区切りになります。

また、犯罪被害による医療費や休業による減収など、経済的な負担を回復するためにも、②③の手続きは利用すべきと思います。通常の裁判のように時間や費用もかかりませんので、利用しやすいという利点もあります。

また、加害者との示談交渉を自身でやりたくない場合には、弁護士に示談交渉を依頼することも可能です。被害を受けてショックを受けている場合に相手方と示談交渉を強要されるのは、二次被害ともいえる大きな負担てす。

示談交渉自体は安価で引き受けてくれる弁護士もいますので、検討してみてはいかがでしょうか。

2014年1月13日月曜日

相続税の増税について

相続税が、平成27年1月1日から実質的に増税となります。

相続税とは、相続する財産の価額に応じて一定割合の納付が必要となる税金の一つです。
ただし、これまでは相続税をかされるひとはそれほど多くありませんでした。それは、相続税は、相続財産が5000万円+(1000万円×相続人の数)をこえない限り、課されないからでした。つまり、相続財産が少なくとも6000万円以上(相続人が一人以上)なければ相続税は課されないのですが、相続財産がそれほど多額になるケースは、それほど多くはないからでした。

しかし、平成27年1月1日からは、相続財産が3000万円+(600万円×相続人)をこえる場合に課されることのになります。つまり、3600万円以上であれば、相続税が課されることになります。これは、預貯金等やマイホームと土地をあわせて相続した場合には、簡単にこえてしまう額です。

もっとも、相続財産でも、すべてが時価で計算されるわけではありません。例えば、住居用の不動産は減額されて計算されます。

このように、従来と異なり、相続税は誰でも課される身近なものとなりました。また、相続財産の計算でも、放っておくと課税されてしまう額に達してしまうため、自分で税務署等に説明をしたりする必要しなければならないケースも増えてくると思います。

相続税の税率自体は変わらないのですが、これまで払う必要のなかった多くのひとが払わなければならなくなったという意味で、今回の相続税の実質的増税は、影響が大きなものといえます。